温故知新 自動化アーカイブス 第5回
会報委員 渡辺 広志
株式会社東京自働機械製作所
記事目:自動組立機の標準化思考(その3)
執筆者:高久龍雄(キヤノンKK)
掲載号:自動組立ニュース1977.3〜1977.8(全6回)
<4>標準化として採用できるユニット
*結合、移送、電装ユニット
「自動機組立で使用するユニットといっても色々な種類があって、まとめるのには大変ですね。それに各々大きさや精度、寿命が考えられるわけですから数からするとずい分のものになりますね。今月はその辺から話して下さいますか、整理してからだとわかり易いので。」
「そうですね、それでは組立機械用語一覧を付表として付けてみましたので、まずそれを一読してみて下さい。これは、精機学会(現、精密工学会)の自動組立専門委員会でまとめたものですが、体系的に一読できるので大変便利です。」
「なるほど、これはわかり易いですね。これに各々の言葉を説明する解説文と絵が付いていて、それぞれのユニットが組立機のどこの部分に使われているかがわかればなお良いと思うな。」
「おっしゃる通りです。一部その様な事が書かれている解説があるのですが、ここでは紹介しません。それでこの表のまず一番目が組立ですが、これは組立機を作るソフトのような部分ですから、使用用語の統一等が主な所です。特有な言葉、例えば混成組立とか、異物、不揃いなどがあります。」
「しかし異物や不揃い等は他でも良くいいますよ。」
「でも大きな要素を意味しませんでしょう。ところが組立機では、この二つの言葉は供給で重要なポイントになります。その事は来月詳しく話そうと思います。それから次に組付ですが、これは組立課工そのものに関係があり、移送は一般の専門機と同じですが、先に話した供給は自動組立機に欠く事のできない事は良くご承知だと思いますが、これは来月にまわしまして、最後にその他ですが、この中にはむしろその他でなく大切な検出装置の項が入っています。この表では特に電装の事は定義しておりませんが、これは電装が組立機だけというものでなく、広く使われていますので記載していません。移送も同じ事ですが、これはまだ組立機械特有なものがいくつかありますので書いてあるわけです。」
「この表は設計の時のチェックシートとしても使えそうですね。」
「よい所に気が付きました。構想図を書く時等は非常に便利ですし、設計者が新しいアイデアを出す時にも良く使っている様です。それではまず、組付のなかで”結合”に使われるユニットをどの様に標準化していったら良いかといったところから話しましょう。どんな結合工程が多いですか。」
「私の所では、やっぱりネジ締めかな、それと小物はかしめとか溶接、最近ノリ付、接着の事ですがこれがずい分増えてきましたよ。」
「結合は組立の中で付加価値の付く唯一の作業です。組立機械でその他の作業が色々とありますが、それらはすべて結合の為の準備作業や後始末作業に他なりません。」
「すると、結合という付加価値の為にずい分手間の掛かる事をしている事になりますね。組立はずい分もうからない仕事をしているんだな。」
「そうなんです。そして結合を行なうユニットが組立機の中で一番安いという事も変な感じだと思います。
しかし、先の話にもありました接着はけっこう高価なのですが、これはA部品とB部品を結合させるのにC部品にあたる接着剤があるからなのです。これと同じ事がねじ締、リベット結合、ピン結合、溶接などにもいえますが、これらは組立図の中では三種類すなわちABC部品の部品番号が必要になるはずです。実際はそんなに良く考えずに図面を書く設計者が多く、接着などではいつもはっきりせずに生産技術者を泣かせます。」
「そうそう、私共でも接着やハンダは部品番号を入れてませんし、品質の指示も不明確ですよ。なにか固い物は部品として取扱い、やわらかいものは補助材になってしまうのが傾向ですね。」
「ですから、接着などの様に種類が多く、正確に機械で決められないものはどうしても高価なユニットになってしまうわけです。またねじ締ユニットは色々なメーカで販売している様ですが、これはまだ決定版がなく、各社でどこのメーカが良いのかまよっています。」
「確かに接着にしろねじ締にしろ、部品一つを持っているのと同じですからうまくゆかないのでしょう。」
「その通りです。しかしこれもできる事ならメーカを決めて共同開発してやっても良いと思います。そして自社特有なものを作り、それを社内標準にしたら良いでしょう。その他の結合ユニットですが、カシメ、圧着、圧入、はめこみ、などがあります。これらはAB両部品に外圧を掛けて結合するので変形が問題になり、ユニットの選定と共に力かげんがノウハウデータとして必要になります。しかしこの辺のユニットはメーカ品で充分使えますので、よほど特別でないかぎり内製の必要はないでしょう。次により合わせ、巻きつけ、引っかけと続きますが、これは市販品を期待しないほうが良いでしょう。むしろ同じ仕事をしている所から購入すべきものです。それが一般性を持った時に市販品となりますが、代替として工具を上手に利用するのもよいでしょう。」
「結合ユニットをまとめると、市販品を一応標準として、むしろ社内で独特なものを開発してそれを社内標準として使う、そして市販の工具を利用したユニット等もその中に入れる。などでよろしいですか。」
「けっこうです。次に装入、取出、組付治具、組付工具といきたいのですが、これは来月の供給と一緒に話した方が良いと思いますのでぬかします。それで移送に移らしてもらいますが、これは小さいものから数十mというのもありますし、中には工場全体が一つの移送システムになっていたりしますので、導入に際しては単に技術屋が考えるのではなく、むしろ生産管理のレイアウト専門屋がやる方が良いでしょう。また小さなものでも全体の中の一つとしてとらえ、これもレイアウト専門家の許可を受ける必要があります。これを守ってください。」
「いや確かに技術屋は1人よがりの性質があるな、技術内容が深いから、幅の広がりまで考えが及ばないんですよ。しかしこれからは単純な技術だけでなく、経営的判断とか、人間性、社会性、関連部門との融和などに力を向けないといけませんね。特に移送の様なのもは。」
「そう理解してくれる技術屋はまだまだ少ないんです。ですから技術屋がやったムダは会社トータルでは莫大な金額になっています。そして先に話した生産管理側の技術不足コンプレックスによる無批判と経営側の日程第一主義によるあせりの中にあって、益々大物の技術屋が育たなくなってきています。
さて、そういう意味からも移送の様に大きなものになると、一層の注意が必要です。この標準化を行なうには二通りで考え、まずワークによって大きさを決め、次に工程によって流し方を決めます。各会社ではほとんど同じ様なものを生産しているわけですから、流し方の統一さえできていれば、標準の物が作れるはずです。ですからこれも生産管理的になりますが、加工製品のGT化を進める事が大切です。」
「移送はメーカ品を使っている会社が多いようですがどんなものでしょうか。」
「これは作るのに大変だという事からメーカ品を利用するわけですが、むしろそんな単純に考えない方がよいでしょう。しかし、移送ユニットはそう数を作るわけではありませんので、社内標準を作る時にはコスト的な面で注意を要します。」
「紙の上で標準品になっていても、しょっちゅう作っているわけではないから、いざ作る段になるとコスト高になるという事ですね。その辺をなにかよい手はありませんか。最近コストダウンがやかましくなっていますから。」
「まず移送ユニットのコスト分析をしてみて、一番費用のかかっている所だけを市販品にする手があります。例えば割出し機構とか、位置決め機構などが考えられます。またそれを選ぶ場合にはメーカがシリーズで大きさなり、工程数、精度などを用意している事がポイントになります。そして一般的には市場で評判の良いものを使うと良いです。」
「この間、ある専門機メーカの人がいっていましたが、バレルカムで有名なメーカの割出機構を購入した所、どうしたわけか、位置が0.1mmどうしてもずれている。そこでこれは測定の誤まりだと現場の者に何べんも注意をしたんだそうです。しかしどんなに注意して測定してもずれているといわれ測定に立合った折、バレルカム機構の不良にまちがえなかったと結果がでたそうなんです。メーカもあてにならないと思いましたよ。」
「しかし、その様なメーカはだんだん評判が悪くなってくるはずです。むしろそんなに心配するのならば、逆に有名な組立機メーカがどんな他社コンポーネントやユニットを使っているか調べるのが良いでしょう。」
「それも手ですね。有名な組立機メーカでしたら、購入に際して十分なチェックをしているでしょうから。」
「えーと最後に電装についてですが、これは現場に行ってから、故障の際一番わからない部分ですからダウンタイムを最も少なくする意味からも、この部分をユニット化し、ランプ表示を工程ごとに行なって故障した時にランプの点滅を見て、その部分のユニットを取替えてしまう事が良いでしょう。」
「しかし、全部ユニットが違うと2倍の装置を持っておかなければならず費用が大変になりますよ。それにPM用の場所が物置になってしまうな。」
「ですから各々のユニットを共通にして、プロセスだけをピンボード方式にして変える様にしておけばその心配はありません。よくこの事を話しますと、そこまで考えて標準化するより、電気部品はすぐどこでもそろえられるのだから専用で十分であると答える電気屋が多いのですが、これは現場を知らない事と電気部品の信頼性に対する知識不足から来るもので、もっとダウンタイムによる生産のみだれや、経費のムダを考えた上で設計することが大切です。」
「よくわかりました。電装は市販品の組合せですからよく考えてユニット標準をしていきたいと思います。
それにしても今月は大分技術屋におしかりの言葉が多かったようですが、それだけ生産活動の中で重要だという事なんですね。来月は装入と供給についてお話をお願いします。」
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