温故知新 自動化アーカイブス 第4回

会報委員 渡辺 広志
株式会社東京自働機械製作所

記事目:自動組立機の標準化思考(その2)
執筆者:高久龍雄(キヤノンKK)
掲載号:自動組立ニュース1977.3〜1977.8(全6回)

<3>標準化に向くコンポーネント

*部品価格と故障時間

「さて今月からいよいよ具体的な標準化の話をしてもらう事になっていますが、その前にもう1度標準化の意義といますか、利点をまとめて話して下さいますか。」

「そうですね、それでは標準化によって出てくるメリットを三つにわけてみましょう。
第1は、品質の向上です。これは標準品を使う事によって、作られる製品が安定するからです。当然設計品質も含まれますが、なんといっても信頼性が高く、お客様の所へ行っても安心してられます。

第2は、コストの低減です。これは標準品は数多く使われている為に量産効果が出て安くなるからです。もちろん新たな設計費等がいりませんのでその分がないだけでも助かります。

第3は、納期の短縮です。これは標準品でストックしてあれば即座に使えますが、もし新たに作る場合でも設計時間やテスト時間、鋳物部があるもの等でしたらその木型が用意されているので、すぐ出来るしまた加工者がなれているとか、治工具が用意されているとか時間はなにしろ短くて済みます。」

「すると製品評価の三大ポイントである品質、コスト、納期と全てに良い事になりますね。」

「はい。それから、標準化の一番大切な事は皆さんと一緒に決めた標準品を皆さん自身が設計のときに使い育てる事だと思います」

「そうか、いやその事は何回も云われないと守れそうもないですね。むしろなんといったらよいか、少し虫の良い話かもしれませんが、守れる様な標準化がないものですかね。」

「ですから標準化する時には必ず裏付けとなる実験をする事と、決める時には皆さんの同意のもとで行なう事が大切なのです。」

「わかりました。要は一人よがりは良くないという事ですね、さてそれではコンポーネントの標準化についてですが、まずコンポーネントの分類あたりから話して下さいますか。」

「いやその前に、このコンポーネントという事になるとまず非常に種類が多く値段も色々になりますので、まず組立機向きと決めてからにしたいのです。」

「というと、組立機を定義してからそれに向くものと話が進むわけですか。」

「ええ、そうかしこまった話にしなくても良いのですが、組立機は加工機と異なって防油の必要性は少ない様ですし、切粉がたくさんでる事も少ないでしょう。それから特別な場合をのぞき高温とか多湿の心配もありません。また大電力を使う事もそう多くありませんのでその点もコンポーネントを選ぶ場合に注意することです。」

「といいますと、標準化をする時にはめったに使わないものはあまり考えなくてもいいわけですね。」

「標準化の必要性は多く使われる部品だからこそやるべきだとの意見と、いやめったに使わない部品だからこそやっておくべきだとの意見がありますが、まあ両方ともに一理あります。私はめったに使わない部品は出来るだけ使わないで済む設計にする事と、どうしても使わなければならない場合には一流メーカのものを使う事を薦めています。それから標準化といってもまず自分の会社としてどんなものを標準品にするかという事ですから、手始めに会社で使われているコンポーネントを調べてみて、確かに信頼があると思われるものから決めて行くと良いのではないでしょうか。」

「それなら設計者の人も満足して標準品を使いますね。それから私自身いつも思っている事ですが、標準品の書いてある表が見易い様だと使うと思うのですが。」 「その通りです。標準表は一覧表になっていると誰でもが全体を理解しやすく、使い易いものです。そしてその表は単発的なものでなく、組織だっていたり、またつながっていたりしなければわかりにくくなります。」

「確かにそうですね、私も設計する時にもう一回り大きいものを使いたいとか、もうチョット容量の大きいものを使いたい時に、種類が少ないと別のメーカや品種に変えなければならなくなりますよ。」

「コンポーネントの標準化を成功させる為にはどんな所を注意したら良いか表1を参考にして下さい。ただしすでにJISなどで決まっているものは当然使うとの条件を忘れないでほしいと思います。」
表1 コンポーネントを標準化するには
1.自社内で以前からよく使われているものを調査し表にしてみる。
2.自社内で使われて、寿命や故障等の点で安心できるものを選ぶ。
3.一流メーカが継続的に生産し、市場へ大量に出ておりどこでも入手出来るものを選ぶ。
4.メーカで能力のクラス別にシリーズ化されているものを選ぶ。
5.同性能のものはメーカ比較をして品質・価格・納期で決める。
6.取付、取外しが簡単であるものを選ぶ。
7.寿命がはっきりと示されており、メンテナンスの方法が記載されているものを選ぶ。

「新製品の取扱いはどうしますか。確かに旧製品よりよくなって見えるんですよ。」

「これはいつも標準化の時にぶつかる大きな問題です。特に耐久性やその製品の限界値は使ってからでないとなんともいえません。一番の決め手といったら、やはり信用のおけるメーカであるかないかでしょう。」

「それはそうかも知れませんね、一流メーカや特長あるメーカは出荷製品に対して品質保証は必ず全製品にやっているはずですよね。」

「そうです。ですから新製品でも品質保証されているはずですから、故障の心配も少なくて済みます。それから故障の話がでましたのでついでに話しておきますが、いくら安いからといって、品質の不安定な製品を使うと故障の責任はそれを選んだ設計者が悪い事になりますし故障製品を取替える時間、すなわち機械を止めておく事による損失時間分を計算してみれば、始めの投資金額の差になりません。高くても良いものを薦めます。」

「その話で思い出しましたが、ある専用機のメーカで社長さんが、”当社では一流のコンポーネントしか使いませんそれは、部品故障で、お客様に迷惑を掛けない事と、我々の様な小さな会社がコンポーネントの故障でサービスに行ってたりしたら利益など残るわけがありません”といってましたよ、それからその会社で使うコンポーネントは取外しが簡単に出切る様なものを選んでいるし、また設計の時も外し易い所に付けているともいってました。」

「それは良い事です。特に客先で取替をやっていただける様に、客先の標準コンポーネントを使ったり、取外しが簡単に出来る場所に付ける事等が大切です。必ずコンポーネント等は寿命が記入されているでしょうからその時には止まる前にPMをやる様にしたいものです。

「表2はどの様な見方をすれば良いですか。」

「これはコンポーネントを性質別に分けたものです。メカ部品とありますが、これはねじやピン等の部品でなくメカコンポーネントです。」
表2 コンポーネントの分類
メカコンポーネントフィンガ、エスケープメント、シュート、ハンドル、ギヤヘッド
空圧コンポーネントバルブ、シリンダ、三点セット、(パイピング関係)
油圧コンポーネントバルブ、シリンダ、油圧ゲージ、フィルタ、(パイピング関係)
電気コンポーネント(電子)モータ、ソレノイド、スイッチ、クラッチ、フォトセンサ

「日本ではまだ少ない様ですね。」

「そうなんです。日本の産業は確かにテレビや自動車、カメラや時計等は非常に良くなりましたが、それは一般家庭向き商品であって、それらを生産する産業機械や基礎機械はまだヨーロッパや米国の方が、一日の長がある様に思えます。パーツであるねじやピン等は標準化されて来て、国際的に評価されて来てますが、その上の段であるコンポーネントになるとまだまだ標準品としてみとめられるものはあまり多くありません。このコンポーネントが良くなりませんと、それらを構成して作られている機械等が良くなるわけがないのです。」

「ではどうしたら我々の設計する組立機等が良い製品というか、世界屈指の機械にすることが出来るのですか。」

「日本の産業の特長として、数を作る事によってコストを下げ、しかも品質の安定をみるという所があります。これは日本ばかりではありませんが、特に日本人は小ロットをこなすのでなく大ロットを大勢でワッとこなすのが得意なんだと思います。そこでこの得意技を活かす事にして、組立機を考えますと、組立機を多量に作れば良い事になるわけです。」

「でも実際にはそうはいかないから、その組立機を構成しているコンポーネントを標準化してたくさん作り、品質を安定させ、コストを下げる事によって組立機を良くするという事になるわけですね。」

「先に言われてしまいましたが、その通りです。特にメカコンポーネントが一番遅れているわけですから大いに努力する必要があるわけです。」

「考えてみると、メカコンポーネントメーカで有名な所がありませんね。」

「いやそんな事もないでしょうが、少ないですね、電気や空圧、油圧は日本でも世界的メーカが出て来ましたが、メカとなるとJIS製品以外で世界的メーカはほとんどありません。これはユーザ側にも大いに責任があります。メカはその機械の外観的特長になりますので、少しでも違った形の製品を作ろうとして、ハンドルやスピンドル等も特注品を使います。それも専門メーカに依頼するのではなく、自社で生産する事が多いので困りものです。これでは専門メーカの育ちようがありません。」

「組立機の中でもフィンガーやエスケープメントユニット、マガジンシュート、色々あるはずですが、どうも帯に短し、たすきに長しでどうもうまく使えないな、いやいやこんな事を言っているからだめなんですね。来月はどんなユニットについて話してもらえるのですか。」

「標準可能な移送、加工、電装の各ユニットはどうあるべきか、またどうしたらこれらを標準化として採用する事が出来るかを中心に話してまいりましょう。」

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