温故知新 自動化アーカイブス 第6回
会報委員 渡辺 広志
株式会社東京自働機械製作所
この連載は、自動組立ニュースに掲載された記事の中から、現在でも十分に通用する内容を選んでポイントとなる部分を転載しているものです。まさに「温故知新」です。標準化思考の話も佳境に入り、前号に引き続き標準化として採用できるユニット、とりわけ自動化には重要な装入および供給ユニットを紹介しています(掲載時の図は省略していますので、ご了承ください)。
記事目:自動組立機の標準化思考(その4)
執筆者:高久龍雄(キヤノンKK)
掲載号:自動組立ニュース1977.3〜1977.8(全6回)
<5>標準化として採用できるユニット 2
*装入ユニット、供給ユニット
「前回に続いてユニット関係の標準化について話していただくわけですが、今回のテーマはまさに自動組立の心臓部といいますか、面白いところですね。」
「そうです。しかし面白いと言うよりむしろ一番むずかしいところと言えましょう。確かに装入や供給となりますと多少、加工の自動化でも経験があるとは思いますが、これこそ自動組立機によって大いに有名になったユニットであり、この二種のユニットがまともに動くか動かないかで、組立機が自動か手動かの別れ道になるのだろうと思います。」
「どうも大変なユニットの話しになってきましたが、私達が見本市などに行きますと、必ずこの手に出会うわけです。その時によく思うのですけど、装入ユニットは割合に一定したスタイルとか、動きをしているけど、供給となりますとパーツフィーダはともかく、シュートやマガジン類はいろいろな種類があってどう分けたら、目的別になるのか分からなくなります。」
「その通りで、装入は何種類かに分類することができ、しかもほとんど単に大きいユニットか、小さいユニットかの違いだけなのです。これは図を参照されてみれば良く分かると思います。一方供給ユニットは、これから知恵を出し合って最良の方法が出てくるでしょう。装入ユニットの標準化について、もう少しくわしく話しましょう。」
「まず第一に対象ワークの分類をしてみる事です。」
「ワークの分類といっても、どこから手を付けたら良いのか見当がつきませんよ。世の中にあるものは無限に近いし、分類の方法も材料や形状、精度、前加工機といろいろあって頭が分裂してしまいそうだな。」
「標準化のむずかしさはそこにあります。ですから前にも述べましたようにまず自分の会社で自動組立可能な製品に絞ってやってみて下さい。自動組立可能とは、経済的に見合う数量や工数と技術的に可能性のあるものを指します。」
「そう割切って考えれば楽ですね。私共の会社ではざっと見回してみても、まずピンセットでしかつまめないもの、次に指でつまめるもの、片手に乗るもの、両手で持てるもの、人では持てないもの、ぐらいに分類できますね。」
「非常に良い分類ですね。大まかにはまず”大きさ”の分類をして、移送機と治具取付け具の大きさを決めます。次に”組立作業的”にその大きさ分類の中を分ければ良いでしょう。そして最後にそのワークの”特徴”で分けます。この程度で十分です。あまりソフトウェアに気を取られていますと、ハードウェアの開発が遅れてしまいますから。」
「良くわかりましたが、最後の特徴というところをもう少し話して下さい。」
「これは材質とか、品質とか状態がどうであるかなどです。たとえば、精密部品やガラス等外観のキズをきらうもの、ゴミやシミをつけてはいけないもの、フェルトやゴム等のようにやわらなかもの、その他いろいろな条件が付いています。しかしこれらは装入ユニットそれ自体よりフィンガ等に関係が深いもので、むしろ大きさ分類の次にやらなければならない組立作業的分類の方が、ユニットの形態を決めるのに必要な分類なのです。」
「組立作業的といいますと、上から組付けるとか、横斜めのように方向位置決めそれから圧入とか、単純な装入とかその持って行った後の結合にまで関係するところですね。これは確かにユニットに大きな影響をあたえますね。」
「そうなんです。ですからワークの大きさ、すなわちユニットの運動長さよりも、まず形態を決め、それに運動長さと特長を加えるのが良いのですが、一般的に装入の形態は決まってますので大きさ分類で良いと思うわけです。ユニット例として載せてありますS社のものは直角座標タイプと円筒座標タイプのものですが、これは非常に汎用性があり、多くの場所で使われています。」
「その他には極座標タイプのものがスイスから出て、日本のメーカも作り始めました。」
「そうです。極座標とその他の形態のものをまぜ合せて作ったものもあります。たとえば、米国のユニメート等はその良い見本で、自動車のフレームを溶接するオートハンドとして使われていますが、それ以外ではチョット高価すぎて採算に合わないようです。」
「すると、各々の座標とそれらを組合せた形態の装入ユニットをフォーム図として書き、それに運動長さを決め、あとは特長をプラスαしてみればでき上がりですね。」
「そうです。そしてどのようなメカニズム、動力を使えば安価で安定したものになるのかというところです。最近では組立機の高速化とメンテナンスフリー化、高精度位置決め等の要求が大きくなりましたので、小物すなわちピンセットから片手までの範囲は、メカを使う事が常識化してきました。メカはなんと言っても量を作ってこそコストダウンや品質の安定が計れるものですから、是非とも標準品を決め、大いに使う事が望ましいと思います。装入ユニットの標準化はできそうな感じがしませんか。」
「そうですね。分類のところでちょっと大変だと思いましたが、良く考えてみるとこれは装入ユニットに限った事でなく、あらゆる標準作りに必要な作業なんですね。」
「その通りです。では大物の供給ユニットをどうしたら標準化できるかを検討してみましょう。バイブレータによるホッパフィーダは良く知られていますし、またいろいろなワークに対して無難に使いこなされているのでフィーダと言うとこれだけだと思っている人が多いようです。ところが、このフィーダぐらい多くの種類が出てくるテーマも少ないと思います。図を見ていただけば分かりますが、全部の種類を覚えるだけでも大変で、その特長や使い方、作り方のポイントにまでなると専門家が必要です。
もちろん現在でも振動タイプのパーツフィーダだけで専門メーカが多数あるわけですから”供給”の奥の深さがうかがえます。振動ホッパフィーダは既存のメーカを使うとして、その他のフィーダはどうするかといいますと、各社各様なものを独自で開発使用しています。ですからフィーダの特長を理解して自社内で標準化された方が良いでしょう。」
「でも研究をだいぶやらないと標準化まではむずかしいでしょうね。」
「大変な苦労が待っていると思いますよ。」
「その他は供給関係の標準化はどうでしょうか。」
「ホッパフィーダはバラバラの部品を整列させて送り出すわけですが、始めから整列させたワークを詰めて順番に送り出すマガジンは、整列不可能ワークや前工程ですでに整列されて出て来るワーク等に使われ、利用率の高い供給ユニットと言えます。これも多種に渡っており、ほとんど社内製です。しかし、確実な供給ができるところから、組立機に1つや2つ必ず付いています。このマガジンは図で見られるように一番多くしかも安く積む方法をといろいろと考案されています。特にラセン型や立体型は容量が多く使われます。ラセンタイプはシュートとしても共通に使われるので加工と加工の間に付けたりします。このシュートとマガジン共用型としては鋼板の薄い板を重ねてワークに合せて作れるところから鋼板すなわち材料自体を標準にしています。実に上手いやり方です。それから立体マガジンとしてはワークを入れるパレットをプラスチックモールドで作り、ワークによって一部加工する事で標準にしています。」
「なるほど、この話は実に良いポイントを突かれていますね。単にユニット的標準でなく、ユニットを構成する部品を標準化してあらゆる用途に使える事を考えるなんて本当に標準を意識しないと気がつかないな。」
「その他の供給関係ですとシュート・分離機構等ありますがこれも先のマガジンと同じだと考えてやれば、面白いアイデアが出るでしょう。」
「今回は自動組立機ならではの二種のユニットを、どうすれば標準化できるかを話してもらいましたが、全部をこれから手掛ける事は時間と金が必要になり、今必要な組立機を作らずにユニットだけに熱中できませんから市販品で自分のところと合うものを使い、それによって社内で治工具・取付具等の製品に直接関係したところに力を入れて自社製の組立機を作ってみたいと思います。」
「大変良い事ですね。信頼できる市販ユニットを早く見つけて大いに導入してみて下さい。またクレーム等も優良メーカでしたら十分聞いてくれると思いますので、どしどし出したら良いでしょう。」
「さて来月でいよいよ終りですが、どのように締めくくるのですか。」
「今まで話してきました各標準品を多く使い、一台の組立機としてまとめ上げた事例を紹介すると共に、その注意事項を列挙してみる事にします。」
「楽しみにしています。是非いろいろな写真や図を見せて下さい。どうも話しだけですと感じがつかめませんので。」
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