自動化こぼれ話(191)整列のポテンシャル

山梨大学名誉教授 牧野 洋

3D空間に置かれた物体は、三つの位置の自由度とともに三つの姿勢の自由度を持つことが知られている。両者を合わせて6個の位置姿勢の自由度を持つ。 

加工機あるいは組立ロボットにおいて機械の主軸あるい はハンドの主軸に設定された局所的な座標系local frame によって表現されたこの6個の数値が希望の値に固定されるとき、これを「整列された」といい、その時の「整列度」あるいは「整列のポテンシャル」が6であるという。また、6個のうちのn個だけが固定されるとき、「整列のポテンシャル」がnであるという。

加工機あるいは組立機に供給する前に手作業によって供給しようとするときには、整列のポテンシャルは0である。 まず第一に局所座標系そのものが不安定であって、確立されていない。仮に軸が定義されたとしても、それぞれの座標値は不安定であって一定でない。絶えず変動している。 整列のポテンシャルはゼロであると見なさざるを得ない。

手作業ではこれをカバーするために、座標値のラフな測定は目により、そのラフな修正は手を動かすことによって行なう。目標値が正確に与えられないために、そこへ到達するのに時間がかかる。 

部品の自動整列供給装置は、このような事態を改善するために設置される。整列のポテンシャルを0から一挙に6に上げるのでなしにいったん3なり5なりに上げ、それを最後に6に上げることによってそれぞれの動作を確実にし、整列に要する時間を短縮しようということである。自動化において優れた部品供給法が必要とされる理由がここにある。