自動化こぼれ話(184)円を描く

山梨大学名誉教授 牧野 洋

手書きで円を描くのはそんなに難しいことではない。

しかし、ロボットで円を描くとなると結構難しい。早く、正確に、と言う条件が付けば尚更である。

10年ほど前に2軸のXYテーブルを作り、これで高速の軌跡制御を行うことを試みた。Z軸にボールペンを付ければXYプロッタとなる。これで円を描くとき、通常行われているような等速制御では高速化することはできない。始終点でペンの速度がいきなり0から一定の大きさに変化するため、ここで振動が起こるからである。

そこで、円という軌跡と、その軌跡の上を走るペンの速度・加速度を分けて考えることにした。そして、運動曲線としてカム曲線(カムに使われている曲線)の中から変形正弦曲線を選び、プログラムを作ってプロッタを動かした。

A4の紙をセットし、これに直径100mmの円を描いた。まず最大速度100mm/sで描いてみる。一周約5秒である。OK。全然問題ない。綺麗な円が描ける。目で見たところ歪は全然なく、真ん丸に描けている。

最大速度を200o/sに上げる。OK。300に上げる。OK。

500.OK。800.OK。とうとう1000o/sにまで上げたが、きれいな、歪のない円が描けた。

実は1000o/sにも上げると、テーブルはガタガタ動く。危なくて近寄れないほどである。それなのに、軌跡はきちんと描けている。プロッタのペンと紙とは一緒に振動していたのである。