自動化こぼれ話(182)アイスクリーム デッシャ

山梨大学名誉教授 牧野 洋

「アイスクリーム デッシャー」の名前は知らなくても、そのものを見たことのある人は多いだろう。アイスクリームを半球状あるいは全球状に整形して取り出す器具のことである。

食品会社の自動化のお手伝いをすることになって、さて、どうするか、ということになった。いままで、硬い鉄の塊ばかり扱ってきたので、柔らかい食品などはどうしたら良いかわからない。例えば、シチューとか、麻婆豆腐とか、そういう液体とも固体ともつかないものを定量分離して供給してくれと言われたらどうするか。

そういえばアイスクリーム、あれには何かあったな。スプーンみたいなもの。

早速グーグルで調べてみると、浅草かっぱ橋の道具街に行けば手に入りそうだということがわかる。そこで、関係者数人、かっぱ橋に赴くこととなった。ここで、デッシャーを含めて、いろいろな調理道具があることを知る。残念ながらメカニカルなものは少なく、すぐに使えそうなものは見当たらなかったが、機械の設計には多くのヒントを得ることができたのであった。

機械と対象ワークの接点にあるのがツールやハンドで、その重要性は往々にして無視されがちであるが、新しい機械はここから検討を始めるべきである。

なお、デッシャーは、私の解釈では、ディッシャーが訛ったもので、アイスクリームを皿に盛って出す。そのために必要となる器具のことを言うのだと思う。