自動化こぼれ話(180)再生の息吹

山梨大学名誉教授 牧野 洋

20数年前、バブルが崩壊して、日本経済はアレヨアレヨという間に転落した。それまで日の出の勢いだった自動車産業や電子産業はいつの間にか先細経営となり、これらに頼っていた機械産業は一転して苦戦を強いられることとなった。自動化装置産業は、自動化して人減らしをするよりも賃金の安い海外で生産をしようということで発注が減り、死ぬか生きるかの瀬戸際に立たされた。

この状態は10年続き、日本の製造技術は「空白の10年」といわれる状態が続いた。いや、この10年は10年で終わらず、さらに10年続いた。今では「空白の20年」と言われている。

この間に多くの優秀な、野心のある技術者達が、韓国や中国の企業のお手伝いをするようになった。そうして、これらの国の技術を日本に劣らないものにすることに貢献した。このことがさらに日本の弱体化を促すこととなった。

こうした状態が今、少しづつではあるが、改善されようとしている。日本の技術の底辺を支える人達が辛抱強く技術を継承しており、次の時代へ伝えようとしている。また、そこへ革新的な新しい技術が結び付こうとしている。

こうした新しい息吹は、昨年開催された幾つかの展示会にも見受けられた。中でも、11月に開催されたロボットショーでは、自動車の車体アセンブリを始め、大規模な展示が観客の目を惹くとともに、従来ロボットには困難だとされていた面倒な作業の自動化が実現されていた。また、同時に展示されていた福祉用のロボットや人型のロボットなどにも、さまざまな工夫や改良が見受けられた。

2014年は日本経済の再生の年になると思われる。しかし心配なのは、そうした経済の発展の中に軍国主義の兆しが見えることである。人殺しの道具でしかない鉄砲の弾を作ったり、汚染と破壊の元凶である原子炉を動かすことによって経済を発展させるのではなく、もっと人々の生活を豊かにし、人々の心に潤いを与えるように経済を発展させなければならない、と私は思う。