自動化こぼれ話(176)コストダウンの時代は終った

山梨大学名誉教授 牧野 洋

新しい年が明けた。経済回復への期待感からか、株価は上がっているが、それが実体経済に基づくものとは思えないほど、日本を取り巻く環境はきびしい。

我々自動化屋の目から見ると、経済が発展しているときには、やれ自動化だ、やれ生産技術の向上だと言っておきながら、少し景気が悪くなると、自動化どころではないという話になる。これは少しおかしいのではないか。

ここ数十年来の自動化技術を振り返ってみると、コストダウン一辺倒でやってきた感じがする。自動化の目的は人減らしであり、それによって生産コストを下げてきた。それによって、日本は経済大国と言われるようになったが、このことは発展途上国の猛追を受ける原因となった。コストだけが競争に勝つ手段であるならば、人件費の安い国が有利になるのは当然である。

それではどうしたら良いのか。製品のコストを下げるのではなく、製品の価値を高める努力をしなければならない。自動化技術・生産技術はコストダウンのためでなく、価値アップを目的としたものに変っていかなければならない。そのことによって、日本は国際的な競争力をつけていかなければならない。

そのことは十分可能であると思われる。