自動化こぼれ話(175)少量生産の自動化

山梨大学名誉教授 牧野 洋

日本で自動組立の始まった1960年頃、自動組立の可能な条件として言われていたのは次の三つである。

 @片手の掌に乗るような大きさの製品
 A部品点数10個以内
 B月産10万個以上
この3条件を満足するような製品であれば組立専用機を作ってもペイすると言われていた。

組立用ロボットが開発され、スカラロボットなどによる自動組立ラインが作られるようになると、この範囲は急速に広がり、多種少量生産品に対しても自動化が適用できるようになった。

例えば、1990年台にソニーが開発したスマートラインは、オーディオ・カセット・プレイヤー、8ミリカメラ、インスタント・カメラなどのメカトロ製品の自動組立に使われたが、1ロボット・ステーション当たりに組める製品は、
 @大きさとしては、300×300×100mm3以内ぐらい
 A部品点数6個以内/ステーション
 Bタクトタイム 平均20秒
というもので、推定であるが、1ライン当たり月産3万個ぐらいの量産品に適用できる。そのフレキシブルな部品供給装置とあいまって、かなりの機種(モデル)変更に適用できる。

以上を簡単に言うと、月産10万個以上でなければ適用できなかった組立の自動化が月産3万個以上に適用できるようになったということである。

なぜ、少量だと自動化が難しいのか? これは考えてみると不思議なことである。量が少なく、ゆっくりと時間を掛けて組めば良いものは、自動化も簡単なのではないか? 1個作るよりも100個作る方が易しいというのは、手作業の世界ではあり得ないことである。

これは多分、経済的な理由によるものであろう。機械を作るにはコストがかかるから、費用対効果を計算しなければならない。多種少量生産ではその率が悪いということであろう。

いかにしたらロボットをもっと少量生産の組立に適用できるようになるか、それを私は、いま考えている。