自動化こぼれ話(174)流しソーメン方式

山梨大学名誉教授 牧野 洋

今、私が新しい組立ラインとして考えているのは流しソーメン方式のラインである。  流しソーメンでは、上流の一箇所から茹で上げたソーメンの固まりを流す。ソーメンは樋を伝って流れるうちにほぐれて下流で待ち構えているそれぞれの人たちの所に届き、箸でつまみ上げられる。

これは一種の解体ラインである。組立ラインとしては、この流れを逆にした、いわば逆流しソーメンラインを考える。

一定の速度で動く長いコンベアを作る。下流にはたくさんのロボットが待ち受けている。主となる一つの部品、あるいはそれを取り付けたパレットを上流から流していくと、ロボットはそれぞれの場所で、それぞれの部品を取り付け、あるいは何らかの作業を行なう。こうして最下流までいけば、組立は完成する。

要点は、コンベアは停まらないこと、組み付けステーションは幾つかの有限の場所に限定されないこと、組み付けロボットはワークを追っかけて(ワークの動きに同期して)組み付けること、である。ロボットのこのような動きはコンベア・トラッキングと呼ばれており、包装用ロボットなどでは普通に採用されている。

なぜ、このようなラインが必要か?

例えば、携帯の総組立ラインを考えてみよう。1ライン当たりの月産個数は150万台であり、これは(1直8時間として)1秒当たり2.5個のタクトに相当する。最近の電子部品マウンタは進歩してきており、1秒当たり10個のマウントさえも不可能ではない。しかし、これは、同一部品を連続して打つ場合の数値である。品種が変わる場合には、部品供給装置との兼ね合いもあるが、1秒当たり2.5個というのはやや限界に近い。

仮に10秒当たり25個打てるマウンタ・セルがあったとして、次のセルまでの搬送は10秒でいけるか?品種切換えには耐えられるか?‐‐なかなか難しそうな気がするのである。とくに部品の大きさに違いがあったり、組み付け時間に差があったりすると、なかなか計画することが難しい。定速コンベアであれば、大きいものは間隔をあければよいし、組付け時間のかかるものは、長い距離を動かす間にやればよいということになる。パラレルラインにするか、複数個を同時に処理しなければならないだろうけれども。

「そんなことは手作業のラインだったら、当り前にやっていることじゃないか」と言うかもしれない。そう、手作業なら当り前のことである。その作業者をロボットに置き換えて自動化しようということである。1秒間に2.5個組める手作業ラインがあるか?あったら教えて欲しい。

このようなラインは、ロボットのコンベア・トラッキングが正確にできるようになったからできるのである。ロボットの変化に合わせて、ラインも変化するべきではないだろうか?