自動化こぼれ話(170)なぜ堤防を作らないのか

山梨大学名誉教授 牧野 洋

地震予知の専門家達が警鐘を鳴らしていることがある。それは、東日本大震災と同程度の規模の地震がまた、近々のうちに起こるかも知れないということである。マグニチュード9の地震が、もう一度太平洋沖で発生し、それに伴う津波が起きたらどうなるか? 危ないのは仙台や大船渡だけではない。福島である。福島原発である。

3月11日の大震災によって、東京電力福島第一原子力発電所の建屋は半壊し、周辺に設置されていた冷却水循環系のポンプや配管なども損傷して、一部は海に流された。原子炉の本体もメルトダウンしたと推定されている。4か月たって、冷却水循環系などは復旧されたが、建屋などの損壊は未解決のままである。

もしここに、第一の津波と同程度の津波が再び襲ったらどうなるか? 建屋は全壊し、周辺機器は大量の放射性物質を含んだまま、海に流れ出すであろう。さらに、恐れている原子炉本体の爆発も起こるかもしれない。

そうなると、放射性物質は風に乗って関東周辺にまで飛散し、東北・関東地区の経済活動は停止し、海に流れ出た放射性物質は魚や海洋生物を汚染して日本人の食生活を脅かすだけでなく、海流に乗って周辺諸国にも影響を与える。そのために日本が周辺諸国に支払わなければならない賠償金額は想像を絶する。

そうならないようにするにはどうするか? 津波を防ぐ手立てを考えなければならない。津波を防ぐには堤防を作るしかない。と私は思う。

海抜20メートルの大堤防を福島第一原発の海側に作る。堤防の構造は二重構造とし、外壁は地震・津波に対して十分な強度を持つとともに、放射能を外部に漏らさないような材質で構成する。そして、内部には、周辺にある放射能を含んだ瓦礫をコンクリートとともに流し込む。給配電・通信線・上下水道などのインフラは堤防の上部3メートルほどに集中させ、最上面に高速道路を作る。このような堤防を半年以内に作る。そのことが急がれているのではないか、と私は思うのである。