自動化こぼれ話(169)からくりの代表

山梨大学名誉教授 牧野 洋

19世紀の末まで、からくりの代表選手は時計であった。腕時計や置時計の精巧なメカニズムは人々を魅了し、そこに使われている歯車やバネなどへの知識を高めることにつながった。ドライバ1本で目覚まし時計を分解し、ついにもとに戻せなかったというような人は私のまわりに何人もいる。

時計の技術は、からくり人形の技術とも結合し、定時ごとに人形や鳥が現われて動作をするようなからくりや、集会の時刻を知らせる教会のチャイムのメカニズムなどへと発展した。これらは、一般大衆が機械の仕組みに触れることのできる代表的なものとなった。

20世紀になると自動車が開発され、そこにさまざまな機械機構が用いられるようになった。エンジン、トランスミッション、ステアリング、サスペンション、−−−それぞれの目的にさまざまな機械部品や、その組み合わせが開発され、機械の粋とも言えるようなお手本が出来上がった。自動車の構造を教えれば機構学が成り立つような状態であった。

21世紀になると、電気自動車やハイブリッド車が実用化され始め、自動車は単なるメカニクスから、メカトロニクスの代表になろうとしている。

ただ、そのメカニズムが庶民に分りやすいかと言えば、残念ながらそうではない。肝心のメカはシャーシの下にあるか、カバーで覆われており、ブラックボックス化が進んでいる。小学生や中学生の理解を超えている。

それでは、からくりの次の代表となるのは何か? それはロボットではないかと思われるのである。

今、ロボコンが盛んである。青少年がロボット作りに夢中になっている。こうしたことによって、いろいろなメカニズムが理解され、普及していくのではないかと思われるのである。