自動化こぼれ話(163)労働生産性

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 少子化と老齢化が進んでいる。その結果、労働可能年齢層(20歳〜60歳)の人の比率はますます減り、1人が(自分を含めて)1.5人を養えば良かった時代から、いつの間にか、1人が3人を養わなければならない時代が近付いてきている。

 このことは、労働生産性(労働者1人当たりの生産量あるいは生産額)を従来の2倍にしなければならないことを意味している。それはどうしたら可能になるだろうか?

 ある人は外国からの移民を自由化して、賃金の安い若手労働力を大量に受け入れるべきだと主張している。これは奴隷制度の思想と同じではないのか? そのような方法で問題が解決するとは思われない。

 大方の製造業では、作業を改善し、能率を上げることによって生産性を高める努力をしている。テイラー、ギルブレスに始まる時間管理の手法から、セル生産方式に至るまで、人間という資源をいかに上手に使うかという手法によって生産性を上げようとしている。それでうまくいかなければ、コストの安い海外に進出するしかない。

 しかし、こうした作業改善の手法では、20%、30%の生産性向上は可能になったとしても、200%、300%の生産性向上は望めない。従来の2倍、3倍に生産性を上げるにはどうしたらいいのか? 

 それは自動化によるしか方法はないのである。自動化・機械化によって、人手作業とは桁違いの生産性を上げられるのである。ビール、煙草、自動車、電機製品‐‐‐これらは全て自動化の歴史の中で効率的な生産を可能にしてきたものだと言えるであろう。