自動化こぼれ話(158)ものづくり日本は復権したか?

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 トヨタ自動車の生産台数がGMを抜いてトップになりそうな勢いである。ホンダや日産も世界10位以内の地位を確保している。

 液晶やプラズマを用いた大型テレビの開発は連日のように新聞やテレビのニュースを賑わせている。こうした記事を読むと、日本はかつての失われた10年の失敗を克服し、ものづくり日本としての優位さを取り戻したかのように見える。

 本当にそうだろうか? われわれ技術者はムードでものを捉えるのでなく、事実にもとづいて物事を判断しなければならない。

 時計の生産はとっくの昔に台湾に首位の座を奪われた。日本が追い抜いたはずのスイスにも、再び抜かれようとしている。半導体は一時の勢いがなくなって、韓国や台湾の後塵を拝している。家電製品なども、いつの間にか中国に首位を奪われている。

 典型的なのは、携帯電話端末である。2006年における全世界の携帯生産台数は10億台であった。そのうち、日本が作った量はたったの5千万台に過ぎない。この数はほぼ日本国内での需要の量に匹敵する。つまり、簡単に言えば、日本は自分たちの使う分を作ったに過ぎない。世界の市場を満たすことはできなかった。

 このような先端技術製品の量産は、従来日本がもっとも得意としてきた分野である。加工や組立におけるフレキシブル・マニュファクチュアリングの実用化、そのためのロボットやNC機の開発、コンピュータ応用−−、これらはわれわれが世界に先駆けて導入し、世界の注目を浴びてきた生産技術である。われわれはそれを持っている。なぜ、それが生かされないのか? どこかで誰かがさぼっているのではないだろうか?