自動化こぼれ話(154)馬力と人力

山梨大学名誉教授 牧野 洋

リハビリ機器などの医療機器に使うモータの動力は80W(ワット)以下にすることと決められているそうである。

「それはですね」と、以下私の解説。

1馬力が750W であることは機械屋なら誰でも知っている。ところで、1馬力は4人力に相当すると古来言われている。馬と人とで綱引きをすると、馬1頭に対し人4人が必要という訳だ。してみると、1人力は約200Wということになる。閉まりかけた自動ドアを手でこじあけることができるためには、自動ドアの動力を1人力の半分以下にするというのは理に叶っている。

スカラ開発当時、スカラ1匹のする仕事は人手の半分だと言われていた。そしてそれはスカラが片手だからだと言われていた。現在スカラのスピードはその頃の数倍になり、精度も良く、安定して仕事ができるようになった。双腕スカラも開発された。

IDEC 社が開発したロボットセルでは、1台のスカラロボットと1台の6軸多関節ロボットが組み合わされているが、1セルの能力は人手10 人に相当するとのことである。ロボット1台当たり5人力の仕事ができることになる。

ロボットは馬を超えた、と言えないだろうか? もっとも、この2台が使っているモータの動力の合計は1馬力を超えているだろうけれども。