自動化こぼれ話(153)娯楽工学

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 アメリカ・カーネギーメロン大学にエンターテインメント・テクノロジ・センタ(Entertainment Technology Center, ETC)という産学共同研究施設がある。日本語に訳せば、「娯楽工学センタ」ということになるだろうか。ここで主に研究されているのはゲームソフトやアニメーションソフト等のコンピュータ応用技術である。

 スカラロボットのロボット殿堂入り表彰式のさいに、このETCを見学する機会があったので参加してきた。

 ここには、全世界から数十人の研究者が集まっている。主として大学院の学生である。やっている研究はというと、たとえば、ドラム叩きゲームがある。直径3メートルほどの円盤の周りに、4つのドラムがあり、これを4人で叩き合う。ドラムを叩く速さや音色に応じて、円盤に映し出されたナマズ(?)状の映像が向きや形を変えながら動く。そうして、障害物を避けながら目標点に到達すると何がしかの点が入り、その合計点を競う訳である。なるほど面白い。音色の識別などは音のセンサとして役に立つだろう。でも、少し気持ちが悪い。

 人生ゲームのテレビゲーム版というのもあった。双六状の画面でポイントをクリックすると、それぞれの場面に行く。ここでまた操作をして、だんだん上がりに近付くわけである。この技術はCADなどに応用できるだろう。

 しかし、と、アニメーションのキャラクタの写真や絵が壁一杯に貼られ、映画に出てきたロボットの模型が置いてある廊下を通りながら、私は思った。大の男が、面白がって妖怪変化を開発していて、それで良いものだろうか。アメリカには、もっと緊急の問題は無かったのか、と。