「ものづくり日本」を支えるベテラン技術者の再登場を

浜本 浩志(自動化推進協会理事)

幅広い工業製品に於いてメードインジャパンが品質と価格競争力で世界市場を席巻し、「ものづくりジャパン」を彷彿とさせた時代が続いた。やがて東西の冷戦が終わり、主として人件費の安さから、世界の工場としての中国の台頭に始まる東南アジアへの生産移行によって、日本は今や「ものづくり日本」のよりどころを何に求め、どう立て直していくかが問われるようになった。そして、この一部始終を担ってきた「団塊の世代」の技術者たちが製造業から退場をし始めている現実がある。

工業製品を高い品質レベルで均一に保ち、量産を可能にする自動化技術もその過程の中で開花し現状レベルに発達してきた。そのレベルは人間に近い動作から始まり、繰り返し精度、スピード、生産持続時間などや生産環境の面で人力を越えるレベルを実現しつつある。自動化のツールもラック、ピ二オン、エアシリンダーなどの単機能要素から、最近では各種センサーからの情報に基づき、サーボ制御された各種アクチュエータや、いろいろな構成の知能ロボットに至るまで、複雑な動作を、高精度高スピード柔軟性を備えて行える領域までをもカバーしつつある。

しかし、このようなツールを必要に応じて開発改良を重ねてきた多くの技術者の多くが引退し、現実的には少子化の中でこの自動化技術を継承すべき若い技術者が不足しつつあり、出来上がったものを使いこなすのが精いっぱいで、新しい作業のニーズを掘り起こし自動化技術を駆使して解決していくパワーが少なく、小さくなりつつあるのも事実であろう。

一方では、平均寿命が延び65歳以上の高齢になっても元気で、多くの技術を保持しまだまだ「ものづくり」の分野で自動化技術の経験を生かせればと考えている人々も数多い。そこで、活躍した企業や組織からはなれたこのような技術者を集め、開発力として再び組織的に機能を発揮できるようなしくみや牽引力の出現が望まれるところである。

自動化推進協会でも2012年にこのような技術者環境や協会の有志の期待を担い、自動化支援センタが提唱され活動を始めている。

(自動化推進、2013VOL.42No.4巻頭言「自動化技術支援センタの夢」参照)

私も微力ながらこれに参加し活動中であるが、多くのニーズに対応して行くには、さらに多彩な技術者を持った人々の参加が望まれる。                      

自動化推進協会としての支援の取り組み過程の中で、目指す自動化は、安全性や保全性はもとより、設備の柔軟性や汎用性、使う人々への種々の配慮など、これからの自動化の在り方についても十分議論をつくし、その方向性が「ものづくり日本」の優位性や特徴を生み出すことに結びつき、それを支えていく若い自動化技術者を育てていくことになればと願ってやまない。

*自動化支援センタへの登録申し込み要領については、自動化推進協会ホームページをご覧ください。