自動化技術教育における空気圧技術講座

株式会社コガネイ 大川 滋(自動化推進協会会報委員)

当協会では、自動化技術者の育成を目的として、自動化技術基礎講座を行っている。この講座は、空気・カム・モータ・制御・ロボットなど、自動化要素技術の13テーマ、全10講座を一年で一巡するもので、10年以上続いている。これだけの自動化要素技術を体系化した講座は他にないと思われ、自動化技術や各要素技術の習得を目指す若手技術者にとっては、非常に良い教育の場となっている。全講座を受講する人も少なくなく、各講座も毎回多くの参加者があり、自動化技術に対する関心の高さを感じている。筆者は、この講座の開始当時からその一つの単元である「空気圧の利用について」の講座の講師を務めている。空気圧は、取り扱いが容易、イニシャルコストが安い、小型である、等の特長によって多くの自動機に利用されており、自動機の小型化、ローコスト化に貢献してきた。自動化技術の中でも重要な技術の一つであると考えている。空気圧機器には、非常に多くの種類があり、それぞれに特長がある。最適な機器を選定するためには、空気圧の特性、機器の特長を十分理解しておくことが必要である。この講座では、空気圧の特性、駆動機器の構造と特長、選定の仕方を解説しおり、空気圧機器を使用する上での基本的な技術を習得できる内容となっている。近年省エネが叫ばれる中、空気圧のエネルギー効率の低さが問題となり、モータ駆動と比較されることがある。講座の中でもこの点について解説しているので、簡単に紹介する。

空気圧では、シリンダで物を動かした後の圧縮空気はエネルギーを持ったまま排気されてしまい、仕事に変換されない。これが、空気圧のエネルギー効率の低さの大きな要因となっている。更に、コンプレッサーの効率、配管の漏れなど効率を低くする要因があり、一般的に空気圧は効率が悪いという認識がもたれてきた。

これに対し、サーボモータでボールねじを介して同じ動作を行う電動駆動を考えてみる。モータは非常に効率が良いというのが、一般的な認識であるが、必ずしもそうではない。垂直方向の上下動作におけるモータの効率は数十%程度であるという報告がある。空気圧シリンダと電動アクチュエータで同じ仕事をさせ両者のエネルギー比較を行うと、消費エネルギーはデューティ比(1サイクルにおける運動時間の割合)に左右され、垂直駆動でデューティ比が小さい場合には、空気圧シリンダの方が消費エネルギーが小さいことがわかってきた。空気圧はエネルギー効率が悪いという一般的な認識を一掃することは出来ないが、効率は条件によって変わってくることを認識する必要がある。

この講座では、更に、よくある失敗事例を挙げ、空気圧を使用する上での問題点の解説を行っている。また、昨年度よりメカトロニクス技術認定試験(TTAM)の空気圧駆動例題についての問題と回答についても解説している。 今後更に多くの技術者が受講してくれることを願っている。