生産技術における自動化推進の課題

富士通株式会社 嶋村 公一(自動化推進協会理事)

富士通鰍フ生産技術に入って27年が経過しようとしています。入社当時は、電機業界各社が汎用組立ロボットの実用化に向け開発競争を繰り広げており、私自身も、ロボットの開発実用化に向け日々取り組んでいました。しかし、80年代後半、ロボットメーカから各種ロボットが提供され、内部開発の必要性はなくなり、私たちは、それまで培ってきたロボット技術を活かした自動化設備の開発へと移行してきました。

一般に半導体やハードディスクなど精密部品の品質は製造時の環境(塵埃・静電気・衝撃)に左右されるため、人手による製造が難しく、自動化設備の開発へ多くのリソースが投入されます。

一方、パソコン、携帯電話などの組立分野は、現在もマニュアル中心の製造体制であり、自動化による生産性の向上は、現在も大きなテーマとなっています。

その製造の特徴は次のとおりです。
■数万種類に及ぶBTO製品の製造
■柔軟物など人間の官能を必要とする組立・検査
■製造期間が3〜6ヶ月と短く、投資の早期回収が必要

このような製品の自動組立を進めるには汎用組立ロボットを活用した設備がかぎを握り、次の条件が必要です。
■ツール・冶具・パーツ供給機が容易に交換できること
■工程組み換えを容易にするため、小型軽量で操作性が良い設備であること
■多世代、他製品にも対応できるベースマシンとなること
■高速化、安定化、省スペース化が図れること

そして、実現・展開するために継続的にすべきことは、
■組付・貼付・ハンダなど作業対象となる要素技術開発
■パーツ供給、ワーク搬送などのハンドリング技術開発
■視覚・力覚フィードバックによる自律化技術の開発
■トータル生産性の向上を図る製品開発源流への取り組み
■自動化を進める中でマニュアル作業とのバランスがとれたライン構築・改善への取り組み
などがあります。

とくにこの分野では、製品開発から、製造プロセス、物の流し方、設備化まで、一貫したものづくりのコンセプトに基づいた自動化展開が要求されます。自動化を推進する技術者自身が、設備の専門家だから・・・と言っているようでは、自動化の実現・展開は程遠く、自動化技術者自身が一貫したものづくりのあるべき姿を考え、関連部門に強力に働きかけることが重要となります。 国内製造にこだわりを持ち、グローバル競争力のあるものづくりを進めるためには、自動化技術の保有は必須であり、それを支える自動化技術者の専門教育はもちろん生産技術者としての育成が、自動化推進の共通テーマであることは間違いないと思います。