複合加工機の発展と共に

中村留精密機械工業梶@取締役技術本部長 沢田 学

 この度,自動化推進協会の理事として参加させて頂く事になりました。 私は,中村留精密工業に入社してから技術畑を一貫して歩んできました。弊社は工作機械を製造・販売しております。自動化推進協会におきましては北陸の会員の皆様と共に活動をしてきました。 まず最初に弊社の事業内容について紹介します。 弊社は1949年に精密部品加工業として創業しました。その後,1962年に油溝切旋盤を商品化第1号として販売致しました。1965年には現在の工作機械としての本格的な第1歩となる自動油圧タレット旋盤を開発しました。1974年には自動油圧タレット旋盤の全盛期でありましたが,その中でNC旋盤の第1号を開発し,その後横型や立型のマシニングセンタの開発を経て複合加工機を開発し,現在に至っています。

 次に複合加工機への歩みについて弊社の製品開発を通じて紹介します。

 1980年代に入ると,NC旋盤に工具交換装置を装着した複合加工機を開発しました。又,タレット型のNC旋盤に2次加工やミーリング加工ができる機構を付加した完成品志向の複合加工機を開発したのもこの時期です。その後,対向型ツインスピンドル機,4軸NC旋盤,Y軸機能やB軸機能の付加と言った多軸の制御を可能とした複合加工機の開発を手がけています。

 市場は従来の少種多量生産から多種多量生産や変種変量生産へと要求が変化しています。多工程に分割された生産工程は複合化され,1台の機械で,素材から完成品へと加工されています。

 この複合機の発展の過程で重要な役割を果たした技術は,加工技術を凝縮させる機械構造のみならず制御技術,特にNC技術です。更に,搬送を主とした自動化技術の進歩無しでは現在のような工程集約を可能とした機械の開発は考えられません。今後ますます複合化は発展していくものと思われます。 工作機械技術に関係する技術者が現在直面する課題としては,工作機械としての精度,剛性,切粉の処理,環境対応等があります。更に,工作物の搬送,把持をフレキシブルにするための自動化も含まれます。この課題に対して,各方面の研究成果がこの自動化推進協会を通じて結集されることを期待しています。

 最後に若い世代の技術者に対して希望することがあります。 昨今の技術,とりわけシュミレーション技術の発展には目をみはるものがあります。工作機械もその恩恵を受けて発展してきています。しかし,ものづくりの現場において,基本は現物に触れることが最も重要であると思います。シュミレーションのみにたよるだけではなく,現物そのものを大切にする姿勢も持ち合わせて欲しいと思います。

 自動化推進協会の発展に微力ではありますが少しでも貢献できればと考えています。どうぞ宜しくお願い致します。