メカトロニクス技術認定試験を世界標準へ

(株)新興技術研究所 代表取締役 技術士
NPO自動化推進協会理事
熊谷 卓

 自動化システムはすべてメカニズム・アクチュエータ・コントローラ・センサの4つの要素群から、それぞれ選定された要素の組合わせで構成されています。エレベータもロボットも自動ドアも、全部4要素の組合わせです。これらのシステムは大部分が、機械と電気の双方の特性を活かして構成され制御されているので、メカニズム(機械)とエレクトロニクス(電気)を組合わせてメカトロニクス技術と呼ばれています。

 自動化技術者は、目的を与えられた場合、「どのメカニズムを、どのアクチュエータで駆動し、どういうコントローラ・ソフトウエアで制御し、どのセンサで検出してフィードバック信号をとるか」を考え、実務的に最適な組合わせを選定する能力が必要です。

 ところが、この技術力を認定する試験が、今日まで世界の何処にもありませんでした。その理由は、メカトロニクス技術を前記の4つの手段要素群からの組合わせとして表現することの、世界的認識がまだ不十分な状態であることと、これを認識しても、4つの手段要素の組合わせが複雑で、適切な試験手法が開発されなかったこと、などによると思われます。

 このたび、自動化推進協会が開発し施行した「メカトロニクス技術認定試験」の試験手法は、手段要素側からの試験でなく、「目的とする動作特性」を与えて実機駆動でこれを実現する「目的側からの試験」とすることで、必要要素を選定する能力と、実システムを構築する能力とを客観的に評価できるようにした極めて合理的な手法で「世界標準となる試験」であると自負しています。(おそらく技術系で初めての「日本発」の世界標準です)。

 この試験は合否ではなく、点数制としてあります。企業にとって、この試験の高得点保有者の人数は、その企業の基礎的な技術レベルを表わすとともに、各技術者の実力を正確に把握することで人員の最適配置が可能となります。個人にとっては、世界に通用する技術認定により、企業内での地位の確保に役立つことはもちろん、自分の実力内容から次への努力目標が確立できるものとなります。

 この試験は(牧野洋試験委員長)、NPO自動化推進協会が主催していますが、その意義と必要性の認識から雇用・能力開発機構傘下の職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)や職業能力開発大学校などからの、会場・設備・要員などについての積極的なご支援のもとに行なわれています。昨年は、幕張の高度ポリテクセンター、魚津の北陸職業能力開発大学校、高岡のポリテクセンター富山、摂津のポリテクセンター関西の4ヶ所で行なわれました。

 具体的な試験方法としては、世界標準とする場合の言葉の壁を出来るだけ低くするために、各要素の機構模型を用いて実物構築が出来る実験装置を用意し、同時にこの図をコンピュータ内に登録して置き、その図をドラッグアンドドロップすることで、実機の構築と同様のことをコンピュータ画面上でシステム構築するので、ほとんど「絵と数字」だけで回答が出来るようにしてあります。また、世界標準を視野に入れて、誰が採点しても同一の点数となるような、設問の構成となっています。

 この試験は、一人が何回でも受験できるので、弱点を勉強しなおして再度挑戦し、次第に高得点に到達すればよいのです。今年は日本全国のなるべく多くの場所で受験できるよう、日本包装機械工業会との提携を含めて、さらに試験会場を準備中です。

 すでに、シンガポールのSISIR、台湾のCPC、などからのライセンス提供に関する問い合わせが来ているので、近い将来、海外へも展開することを予定しています。NPO自動化推進協会が、世界的なメカトロニクス技術認定試験の総本山となることをご期待ください。