シームレス測位と通信にこだわって

(株)日立産機システム
自動化推進協会常任理事
藤井 健二郎

 大学時代は、機械工学を専攻して、バッグパイプの自動演奏装置の開発をしていた。動くもの、制御されるものに興味があったため、卒業後は、ロボットを希望して、視覚センサ、制御装置そして応用システムと産業ロボット畑に従事することになる。そのころ、安易な気持ちで、自動化推進協会の会報委員を引き受けてしまった。それが、協会に関係したきっかけである。

 現在は、GPSを初めとする位置情報や第3世代といわれるCDMA組込み用通信端末関係の仕事をしている。

 いきなりGPSをやろうなんて考えたわけではなく、屋外で走る芝刈機やトラクタのロボット化の位置決め用として利用したのが最初である。10年も前になるが、非常に高価で、使い勝手も悪かった。しかし、屋外の広域な場所で、cmオーダーでリアルタイムに絶対位置が計測出来るセンサは、やはりGPSが優れものだった。実験中に思わず空を見上げ、2万kmかなたの衛生を想像した。

 GPSには通信が必須であった。cmオーダーの精度の位置検出を行なう場合には、基準局という同時に位置を計測するGPS受信機から補正情報を送る必要がある。誤差成分をキャンセルするためだ。移動する機械の位置を高精度に求めるわけだから、必然的に無線通信になる。

 今こだわっているのが、シームレスという言葉である。境界がないという意味であるが、位置を測るにしても、無線通信 をするにしても、ここでしか出来ないとか、こういう環境でしか機能しないとなると、モバイリティのシステムでは使えない。また、使う場所ごとに、機器を使い分けなければならないとなると、これも問題である。

 GPSのような衛生信号は、ビルの中や地下道には届かない。地上にも、衛生を補完する測位環境が必要である。ビル陰や森の中といった場所で微弱な衛生電波を、より高感度に受信できるGPSも有用だ。外でも部屋の中でも、できれば同じ端末で、同じインタフェースで測位が出来る環境、それがシームレスな測位環境である。

 通信にしても、携帯電話の普及に伴い、そのネットワークインフラは高度化し、通信エリアも拡大している。しかし、有料の世界である。ローカルエリアであれば、もっと高速で無料の無線LANを使えばいいし、近距離であれば、チャンネル数も多いブルートゥースといった通信方式もある。人間社会のモバイリティーの世界で、切替えの意識なく、最適に通信が出来る、それがもう一つのシームレスな通信環境である。

 実は、人間共存型のロボットは、まさにモバイリティーの一つの主要要素であり、位置と通信は必須である。シームレスな測位や通信環境が出来るかが、次世代のロボットを発展させる鍵にもなると考える。

 今は、直接ロボットの現場からは離れているが、いずれロボット屋に貢献したいと考えている。