「システムつくり」における「人つくり」の重要性

株式会社SGJ佐藤技術士事務所 代表取締役
技術士(経営工学)自動化推進協会 常任理事
佐藤 幸雄

自動化は理想の「システム化」

 最近、中小企業と接する機会が多くなった。その中で、ISO9000と生産管理のコンピュータシステムの本質が「ものづくり」の自動化と相通ずるところがあることに気が付き、興味深さを感じている。

 「ものづくり」の理想は、目的とする品物が、確実に経済的に作られることである。素材を投入したら、自動的に加工され、目的の品質の製品が最終工程に排出され、そして、このシステムは多少の条件変更にも対応でき、使いこなせることが必要である。この条件を満たすためには、システムを構成する各要素が確実な性能を保有することが前提であるが、最も重要なのは、システムの全体構成である。

 自動化のシステムを成功させる基本は、単純化と標準化である。複雑なシステムを、そのまま自動化すれば、設備費が高く、使いにくく、変化への対応が困難となる。自動化システムを計画する際には、自動化の装置メーカ任せでなく、自社のシステムを分析し、自動化システムに適する内容に単純化、標準化する「人」の能力が必要である。

管理と情報の自動化

 一方、「管理」の理想の姿は、決められた管理対象を「自動的」に処理できるシステムづくりである。製造システムに例をとれば、受注データをインプットすることで、製造の手配から出荷作業までの諸手続きが、人手を掛けずに自動で行なえることが理想である。この過程で、人手による追加変更や異常処理事項は、それに対する方法を明確に規定しておけば、管理されたシステムとなる。この管理のあり方を集約し、国際規格にしたのが ISO9000である。

 また、この管理の「情報」の流れをシステム化したのが、情報システムの理想の姿である。管理の自動化と情報の自動化を成功させるカギは、システムの単純化と標準化である。ISO9000認証取得済み企業はコンピュータシステムの導入がスムーズに行なえ、コンピュータシステムが有効に活用されている企業はISO9000の認証取得が容易である。

「人づくり」の重要性

 このような「ものづくり」「管理」「情報」のそれぞれのシステム構成において、そのシステムの成果を発揮させるのは、そのシステムを「構築する人」の力にかかっている。大企業では、管理スタッフの充実や、改善活動を通じて人が育成されている。しかし、中小企業においては、人不足や、教育の欠如が目立ち、問題である。

 バブルの絶頂期に、メーカ任せで導入した自動化システムが、その後の変化に対応できずに破棄され、生産管理のコンピュータシステムが使い物にならずに放置されている例が見受けられる。「企業は人なり」と言われるように、人づくりの重要性を認識し、「人づくり」への投資こそ、企業の真の力であることを力説したい。