JAAAはNPO法人化で何を目指すべきか

(株)SDL・サスティナブル・デベロップメント研究所 代表取締役
JAAA常任理事財務委員長 法政大学兼任講師(技術社会論)
須田 大春

 自動化推進協会(JAAA)がNPO化に向かって動き始めた。常任理事会・理事会の準備作業を経て、この文章が皆様に届くころには、会の総意としての総会決議まで終わっているかもしれない。しかし、総会決議はNPO化のスタートにすぎず、論議の出発点である。

 そこで、筆者は、筆者自身が「NPO法人に対してどんなイメージを持っていたのか」をここに示してNPO論議・百家争鳴の開始の合図としたい。

 1995年3月、筆者は最盛時は20人近いプログラマをかかえたソフト会社の社長をやめた。神戸の地震と地下鉄サリンは「やめろやめろ」といっているように聞こえたものである。そして翌年、個人会社としてSDLを設立した。そのころ古い友人の一人が「NPO法人にしたらどうか」という意味だったのか、日経新聞のコピーをFAXしてくれた。そのときは、小さいながらも株式会社として設立した直後だったので気持ちは動かなかったが、「NPO法人は面白そうだ」という記憶だけが残った。

 今回、原稿を書くにあたって1996年の夏ごろという記憶だけを頼りにファイルを探したところ、慶応大学の金子郁容教授の顔写真がすっかり黄色くなったFAXの感熱紙から読み取れた。文章は読めなかったものの日付は分かったので、図書館で縮刷版を探すことができた。

 記事は「サンデーニッケイ・リレー討論」の1シリーズで、「NPO法案を考える」という5回続きであった。これによって、NGO・NPOの法人化がどんな環境・どんな目的で企画されたのか当時の空気を思い出すことができる。今となっては貴重なものである。  今は千葉県知事になっている堂本暁子参議院議員が一番バッターで自・社・さ3与党のプロジェクトリーダーとして、神戸の地震でのNPO・NGOの活躍を例にあげて、「市民が主役の原点を忘れずに行政補完の発想を超えよう」と、いわば提案説明している。次は元経済企画庁次官富金原氏、アムネスティ・インターナショナルのイーデス・ハンソン氏と続き4番が金子教授であった。教授は「情報化ネットワーク」との関連で「非営利」の経済活動が新しい経済セクターとして有望であり、アメリカを例に「既存の経済システムに対応しないところに挑戦する、そこから派生する関係性を 楽しむ充足感が事業の動機になっている」と述べている。

 JAAA30年の歴史は、まさに「自動化に絡む企業活動から派生する関係性を楽しむ充足感」を動機として運営されてきた。これを「事業」ととらえなおすことが、これからの課題であろう。「うまくいっているときは変えない、うまくいかなくなったら変えてみる」は創立者牧野名誉会 長の至言である。