スピード

潟fンソーウエーブ
自動化推進協会 理事
浦 康友

 「ただいまこの列車は時速300kmで走っています」。早朝、広島への出張途上、岡山付近で社内アナウンスが響きました。見ると、前方の表示モニターに同じ内容が示されています。小生はそれを聞きながら昔、時速200kmを越える夢の乗り物として新幹線こだまが華々しく登場した映像を思い出しました。あれから約40年、スピードは1.5倍になり、乗り心地も増々改善され、便利で安全な乗り物に進化していきました。当然、モータ出力UPだけで達成されるものでなく、材料、部品、運行システム等あらゆる改善がスピードUPを象徴として示され、国内外で高い評価を受けています。いつもの満員状態がそれを物語っています。

 当社のロボット開発は約35年前の社内使用から始まり、販売(事業)は13年前からです。特徴は“ハイスピード&コンパクト”の、高機能かつ高品質なロボットとして、自動車部品メーカー様を中心に高い評価を受けています。今年内に累計生産3万台を達成する予定です。これはロボット開発の成り立ちとして、トヨタ生産システムの理念の元、厳しい社内ユーザに育てられ、1万4千台のアプリケーションをノウハウとして持つことが可能になったことがあげられます。社内の使い方はロボットを中核として多くの仕事をさせる考えから、最高スピードで動かすものとして義務付けられています。よって耐久性、安全への配慮は徹底しており、プロ(職人)が好むロボットに仕上がっています。

 昨今の“組立ロボット”はバブル期の人手不足への“自動化の旗手”からデフレ期の安い外国人労働者の活用および中国への工場進出により、従来にないコスト競争に苦戦しています。イニシャルコストが低ければ、評価を受ける状態では、少しでも良いものを作ろうとした匠は不用となり、日本の「物作り」は風前の灯です。

 私は新しい商品の開発には、設計(デザイン)と物作り(品質)の両輪として働くのではと思っています。物作りを放棄してメーカーが長く存在し得ないのではないでしょうか。

 しかし、時代は戻りませんがこの時代を生き抜く努力が必要です。よって、安い労働者に勝ち、かつ、匠のノウハウが生かせる物作りは、匠のノウハウを学習できるロボットが必要になってくると思っています。日本の物作りの再生にはこの方法しかないと信じています。現状のロボット性能はまだまだ充分と言えませんが、当社ロボットは先頭ライナーではないでしょうか。近い将来、今以上に進化したロボットが365日、24時間働いている「無人化工場」が夢工場として林立している姿を思いながら、短い旅も終わり、広島駅に立っていました。