自動化こぼれ話(129)土台

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 これは、畏友長谷川誠君の話である。

 生産技術を担当していた彼のところに、あるとき、機械工場から呼び出しがかかった。「新しく買った旋盤にビビリ振動が発生して、どうしても取れないので見にきてくれ」という。彼はその当時としては珍しく、大学卒であるにも関わらず、加工の権威だったのである。

 彼は考えた。機械工場には工作機械を10年、20年と動かしているベテランの作業者が沢山いる。その連中がいろいろと手を尽くして、それでもビビリが取れないとは並大抵のことではない。しかも、その機械は最新鋭の機械な のである。

 そこで、彼は革靴を履いて工場へ出掛けることにした。

 さて、ここで、この話の続きのわかった人は手を挙げてください。ヒントは、この文の表題の中にある。

 現場に着くと、彼はその旋盤の土台を片っ端から革靴で蹴とばした。土台・・・六角ナットを回すと高さを調節できるヤツである。それを順番に蹴とばしていくと、中に1つ引っ込むのがあった。その高さを調節し直して、これで一件落着となった。