自動化こぼれ話(128)ミニロボットとマイクロロボット

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 前回のこぼれ話で紙枚が足りず、肝心の図を載せることができなかったので、ここに図示するとともに、解説を少し付け加えることとしよう。

 産業用ロボットの開発はユニメート、バーサトランに始まるが、この2機種の作業域は大体1m立方ぐらい、可搬質量は100g弱であった。主として溶接用やハンドリング用に用いられているこれらのロボットは、その主なユーザが自動車業界であり、ロボット開発の歴史を作ってきた。

 一方、電機業界においては、1980年前後に開発されたスカラ型を始めとする中小型のロボットを組立用や検査用に多用することになる。これらのロボットは作業域の一辺の長さが300〜400mm、可搬質量が3〜6kgというところである(図参照)。この線を延長してくると比重0.1のライン上に乗ることを前回述べた(比重0.1セオリー)。

 さて、現在求められているロボットは電子部品用、および半導体用のロボットである。その仕様はどのくらいのものであろうか?

 まず、IT関係などの電子部品を考えてみる。その代表的な製品である携帯電話を取り上げてみると、その製品の 長手寸法が約100mm、したがって、ロボットの各軸ストロークも最大で100mmぐらい、可搬質量は約100gである。図の、下から2番目の楕円はこれを示している。

 次に半導体素子を考えてみる。IC、光素子、電子デバイスなどである。これにももちろんいろいろな寸法のものがあるが、その大きいほうのグループをとってみると、長手方向の寸法が30〜40mmぐらい、質量は3〜6gというところである。このグループを図の一番下の楕円で示した。

 さて、この2つの種類のロボットは現存しないロボットである。現状では、たった数グラムのワークを運ぶのに2kgもの質量の組付けヘッドを用い、100mm動けば十分であるものを1mも動かしている。そのために機械のスピードが遅いとか、機械の図体が大きすぎるとかの欠陥が生じている。

 この2つのロボット群、これを仮に「ミニロボット」および「マイクロロボット」と呼ぶことにすると、その開発が今求められている。その仕様を早く確定し、その用途に適した、標準化されたロボットを開発することが必要である。

 ―と、私は思うのである。