自動化こぼれ話(127)比重0.1セオリー

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 ロボットの作業域の大きさと可搬質量の関係を調べてみた。

 6軸の溶接用ロボットなどでは、複雑な作業域の形状をもっているが,最大可搬長Lmaxを想定すると、大体1mぐらいである。作業域体積としては、この3乗、1m3より少し小さい値となる。

 また、スカラ型では、これも大小いろいろあるが、標準的なサイズでいうと、Lmaxが直線距離にして300〜400mmぐらい。作業域体積はこの3乗より少し小さい。

 一方、可搬質量を考えると、前者では100kgぐらい、後者では3〜6kgぐらいとなる。

 もっと小型のロボットを作るとして、たとえばLmaxが100mmぐらいの装置を想定すると、可搬質量はどのくらいを考えたらいいだろうか。

 このロボットの対象作業としては、たとえば携帯電話の組立がある。このワークの寸法は長手が約100mm、したがって、最大可搬長が約100mm、質量は約100gである。

 これらの関係を両対数グラフにプロットしてみると、きれ いに直線上に乗ることがわかる。この直線は比重0.1の直線である。これを「比重0.1セオリー」と呼ぶことにしよう。

 いま、比重1の物体、容器に入れた水とか木・プラスチックなどの体積が1m3あるとすると、その質量は1000kgである。もし質量が100kgとすれば容積はその10分の1である。これはロボットの作業空間の10分の1の体積であるから、その物体の9倍の移動空間がある。比重8のソリッドな鉄ならば体積はさらにその8分の1であって、物体の80倍近い移動空間がある。つまり、比重0.1の物体が作業域を埋め尽くすほどの関係が実用的な可搬重量と作業域との関係ということになる。

 この関係は暗算で簡単に求まるので、ロボットの仕様を決めるときに都合がよい。たとえば半導体パッケージの組立ロボットがあるとして、その(3方向の)最大ストロークが40mmであるとすると、可搬重量は何gあればよいか?

 4×4×4=64なので、6.4gでよいということになる。

 この数字があまりに小さすぎると思われる方はこの文章をあらためて読み直していただき、身近にある半導体パッケージの重さを測っていただきたい。