自動化こぼれ話(126)それで、自動化は
山梨大学名誉教授 牧野 洋
あるIT関係の生産工場を見学した。ライン編成を変えるなど、苦労して生産の合理化を達成している。そのことはわかる。しかし、自動化ラインらしいものは、基板のマウンタラインを除けば見当たらない。
「自動化についてはどうお考えですか?」と質問してみた。
「当社の製品は多品種少量生産なので、専用機を用いて自動化するには適していません。」
(あれ、どこかで聞いた言葉だな?そうだ、20年前、スカラロボットを開発した頃にさんざん聞かされたっけ。)
(でもロボットがあるじゃないの?)
「製品がめまぐるしく変わるので、ロボットのような専用機はすぐ使えなくなってしまうのです。」
(あれ、君、いま、「ロボットのような専用機」と言わなかったっけ? 僕らは専用機でないものを「ロボット」と言っているんだけどな。)
「私達は手でやれることは全て手でやることにしていま す。」
(うむ。なるほど。これは新しい考えだ。そう言い切る所が凄い。今までは「自動化できる所は自動化する」と言ったものだ。でも、あの落差、高速のマウンタラインから通路を隔てて、一挙に手作業のはんだ付けラインに入る所、それまで1部品当たり0.1秒で組んでいたものが、一挙に1部品当たり10秒になる時の落差・・・・それを君はなんとも感じないのかい?)
「私達はいま、2直(2交代制)を3直にする方法を検討中です。人員の6割は社外工にしました。今でも外国人労働者がいますが、これをもっと増やすつもりです。」
(そして、給料の高い日本人はリストラする、とまでは言わなかった。)
(それで自動化はいつやるの?君の会社に技術者はいないのかい?10年間痛めつけられると、技術者は皆こうなってしまうのかな?)
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