自動化推進協会への願い

(株)シチズン時計 常務取締役
梅原 誠

 国の経済の発展につれて労働人口や所得の構成が、第一次産業から第二次産業へ、更には第三次産業に移動していくのは、日本・米国の傾向からも言えることで、恐らく経済学者の方々の常識となっているのでありましょう。この20年間の日本の製造業(※1)も、国民総生産の構成比を6%以上、下げましたが、就業者構成比も4.2%下げました。現在では6400万人の総就業者のおおよそ5分の1の人達が、国民総生産の4分の1貢献していることになります。この間約250万人減じているのは、自動化・合理化による生産性の向上の他、冒頭に書いた傾向である消費国や中国・アジアへの生産拠点の移動でありましょう。

 ドルベースでの一人当たり生産高が、世界でもトップ〈※2)でありながら、過剰な逼塞感を持ってきた日本の景気も、最近では明るい兆しが見えてきているので、これからは空洞化に過敏に反応することもなく、事実を見極めてシッカリと復活して行くと信じますし、またそうであらねばならないと、製造業の一端を担う筆者も思いを新たにしております。

 資源小国の日本にとって「モノづくり」による付加価値は必須でありますし、確かに、例えば国際的なコスト競争力でみれば、同業種でおおよそ日本の20分の1の低賃金の中国は、労働人口の多さや、「顧客的需求」を標榜する意欲の高さや、理科系大学卒業生の数が日本の10倍の60万人もあるという状況を考えれば、質・量ともに優れた能力を示しつつあるのも事実であり、一方日本の理系離れは大いに懸念され、彼我の総合力や可能性の差は止むを得ない所もありますが、心配でもあります。

 しかし、日本人の国民性である勤勉性や、調和を求める集団としての製品開発・品質向上・設備供給や保守、支援産業の幅、総合的経営能力や資質まで、完全に失ったわけではなく、紙誌等で拝見する産・学の日本のリーダーの方々の、モノづくりの大事さや原点吟味の訴えを読むと、日本の強味であるべき研究・開発、生産技術、市場開拓への想いなどで、いたずらにコスト競争や過度の多量生産を避けた差別化技術でアジアの製造業と棲み分け、現在活躍している日本の多くの会社の例のように、日本の製造業の復権が為されることを強く望んでおります。

 本誌最近号(No.1)巻頭言の菅野会長のご意見はまさに正鵠、今後の我々のあるべき姿を求めるご提言であり、従来の腕・カネに加えてますます知的能力で道を広げて行く使命を求めるものかと思います。

 自動化推進協会のますますのご発展と、産業界への今後ますますのご指導の程をお願いする次第です

(※1)日本の製造業
国内総生産構成比 31.3%(1980年)→ 29.5%(1990年)→ 25.0%(2000年)
就業者構成比 24.7%(1980年)→ 24.1%(1990年)→20.5%(2000年)
(総務省統計局統計センター(労働力調査資料)&電通総研資料)
(※2)月刊生産財マーケッティング