ハイテクノロジーとナノテクノロジー

(株)日立ハイテクノロジーズ
自動化推進協会理事
谷口 素也

 小生が自動化推進協会という団体に関わり始めたのは、30歳くらいになった時ですので、すでに20年近くの付き合いになります。具体的には、最初は会報委員の代理であったのが知らないうちに正式な委員になり、さらには、当時の委員長から“若手の抜擢”と煽てられて会報委員長を6年近く務めることになりました。当時(昭和60年ころ)私は、日立製作所の生産技術研究所で、自動組立機の設計から半導体露光装置の開発へと仕事が変わった時期で、本協会の皆さんは、組み立てロボットやら部品供給といった自動化技術の話が多かった中、“半導体製造装置は1ミクロン以下の精度で自動化することが当たり前”といったヘンに生意気な議論をしていたように覚えています。

 さて、昨年10月に日立の半導体製造装置部門と計測器部門が商社(日製産業)と一緒になった新会社(日立ハイテクノロジーズ)に移りましたが、なぜ、今さら“ハイテクノロジーズ”なのか、と思う反面、最近はやり(?)の“ハイテクノロジー(ズ)”というのも、あまりビジネスの香りがしないので、やはりこれでよいのかと納得しています。このようなことにこだわるのも、私の父(谷口紀男(故人);元東京理科大教授、本会名誉会員)がナノテクノロジー(Nanotechnology)の命名者であり、かつ、この技術の将来 性を20年以上前から予見していた人間を常に近くで見ていたからだと思います。ハイテクノロジー、アドバンストテクノロジー、ファインテクノノロジーといった意気込みを示す形容詞ではなく、“百万分の1ミリ(千分の1ミクロン)という原子の領域を人間が操る”という具体的な目標を掲げ、“ナノテクノロジー”という技術の重要性を、まだ1ミクロンの世界で苦労していた時代に世の中に訴えていたことを思うと、その先見性には今さらながら感服しています。

 最近ようやく、半導体・エレクトロニクス産業も上向きに転じてきた気配が感じられますが、従来のような単に便利さを追求する時代ではなく、本当に人間と社会生活に役立つ技術や製品の創出が求められる時代に変わりつつあります。そのためにも、まだ実用化の途についたばかりのナノテクノロジーがその真価を発揮した産業に成長し、新しい文化を作り上げることを期待せざるを得ません。当社も、その時には、改名を考えていることでしょうが・・・。

 自動化推進協会も、変革する10年あるいは20年先の製造業の姿を描くことにより、あらためて会員の皆さんとともに、その役割を見直していくことが必要だと思いますので、ご協力・ご支援のほどよろしくお願いいたします。