設計者は工夫とアイデア
佐々木清人技術士事務所 所長
自動化推進協会 理事
佐々木 清人
最近のモノづくりはセル生産方式の人海戦術が最適であって、従来の生産方式である自動化生産はだめである、というような考え方が主流のようである。しかしよく考えてみれば先端技術を使用した製品は、より微細化と高密度化されている。このような製品の加工・組立が果たして人間の手作業で可能であろうか、多分不可能である。
当協会は、この先端技術を用いた製品の製造に必要な要素技術を推進してきたし、また推進していく必要あがる。しかし現実は、自動化技術はもう必要ないように思う者や企業家がいるようである。どうも最近は目先のことしか見えない人が多いようである。IT産業が、まさにこの典型である。昨年の今頃は半導体装置メーカは猫の手も借りたい程の忙しさだったが、今は非常に仕事が少ない様子である。
この現象には、自動化技術に関係した我々にも責任がある。自動化技術は外国の、特に米国の技術を模倣して発展してきた。初期の頃は米国等に盛んに視察団を派遣して、組立の自動化などを学んだ。次の段階では、この学んだ技術を基に「Made in Japan」の自動機が次々と開発された。
それと平行して、自動化に必要な主要機器が国産化され、自動機の設計は標準化された自動化機器を使用することで企画・設計が容易になってきた。市販品の自動化機 器を使用することで、生産技術のエンジニヤは、カタログエンジニヤとなり、余り考えなくても自動機の設計が出来てしまう。またメカばかりでなく、電気制御においてもリレーやタイマ等の複雑な配線が必要でないPLCが商品化され、自由に制御系が設計できる。
これは、非常に便利になったようであるが、このカタログに頼る機械設計は考えるエンジニヤ(知恵)を失い、同時に自動機を高価な物にしてしまった。このため自動機は高価な機械であり、また大量生産には向いているが、多種生産にはコスト的に不向きであるとの考えが企業に浸透してきた。
ここで生産技術に携わる技術者は原点に戻り、機械の基本を良く理解し、如何にして簡単・低コスト・短納期で自動機を設計するか考えることが大切であろう。
新興技研の熊谷先生が提案されている”知恵を絞った最適生産システム”の必要性を考える時である。そのためには技術者は、どうしたら最適な動作を簡単な機構にできないか、センサを少なくできないか、標準化は可能か、また製造方式を変えられないかなど、製品設計まで踏み込んだ検討が必要である。
また設計者は、現場をよく知ることが大切である。現場での物の造り方は製造のノウハウの宝庫であり、自動機設計に必要な工夫とアイデアが豊富にある。
自動機設計者は工夫とアイデアが勝負だ!!
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